その咳大丈夫?

ワンちゃんも私たち人間と同じく咳き込むことがあります。ワンちゃんの咳も私たちと同じ様にコホコホ音を立てて咳き込みます。

しかし、ワンちゃんの咳は分かりづらいこともあります。本当は咳をしていても、えずく動作を見て、吐きたい様子と表現されるオーナー様もいらっしゃることもあります。また来院した際には、症状が無いこともあります。そのため、咳かな?と思ったら自宅で動画撮影していただけると診断の手助けになります。

ワンちゃんの咳はタバコの煙や冷たい空気の吸引刺激、異物、気管支炎・肺炎等の感染症、心臓病などによって引き起こされます。心臓病で咳?と思われるかもしれませんが、心臓(特に左心房)が大きくなってしまうことにより気管支が圧迫され、咳が誘発されます。

赤枠:左房拡大により気管支が圧迫されている。

心臓超音波画像。左心室から左心房への逆流

 

ワンちゃん全体の約10%が心臓病を発症し、そのうちの75%は僧帽弁閉鎖不全症(MMVD: Myxomatous Mitral Valve Disease )に罹患しているといわれています。僧帽弁閉鎖不全症は年齢とともに発症リスクが高くなります。

当院では僧帽弁閉鎖不全症の診断には身体検査、胸部レントゲン検査、心臓エコー図検査を用います。疾患の初期には聴診時に心臓の雑音が聞こえないこともありますが、基本的には僧帽弁閉鎖不全症に罹患しているワンちゃんの聴診時に心臓の雑音が聞こえます。超音波検査とレントゲン検査の結果次第で、心臓のお薬を飲むことで生存期間が伸びることが証明されているため、投薬が推奨されます。

また近年、心臓外科手術も可能になってきおり、治療のための選択肢が増えてきております。

心臓による咳は循環器、のどや気管、肺などによる咳は呼吸器の疾患になります。

当院では月に一度循環器専門の獣医師による専門外来も行っております。また、呼吸器に関しても月に一度専門外来を行っております。よつや動物病院では、担当医からそれぞれの専門家の獣医師に相談を行える体制になっており、その子にとってベストな診断・治療ができるよう心がけております。

 

ワンちゃんの咳を疑うような症状があるようでしたら是非一度ご相談ください。

 

獣医師  寺澤聡史