原発性上皮小体機能亢進症(たくさん水を飲み、たくさんおしっこをする子に注意!)
多飲多尿(飲水量が多く、おしっこの量も多い状態)が症状として現れる疾患は様々あります。
例えば糖尿病、副腎皮質機能亢進症、腎障害、尿崩症、子宮蓄膿症など。
いづれも日常生活の質を落としたり、ひいては命にまで関わってしまう病気もあります。
その中でもまれな病気である原発性上皮小体機能亢進症を診断・治療する機会がありましたのでご紹介させて頂きます。
上皮小体とは
副甲状腺ともいい、上皮小体ホルモン(PTH)を出して骨や腎臓に働きかけて血中のカルシウム濃度を保つ役割をしている首にある臓器です。左右で2つずつ計4つあります。
上皮小体機能亢進症とは
上皮小体が腫瘍化して、ホルモンを過剰に分泌する事により血液中のカルシウム濃度が高い状態が継続してしまいます。
症状としては、多飲多尿・元気食欲の低下・嘔吐・便秘などを始めとして、意識状態や脈の低下が出てくることもあります。
放っておくと、血管・関節・腎臓などといった臓器にカルシウムの沈着を引き起こし、多臓器の障害に繋がってしまう場合もあります。
○症例
13歳のメスの柴犬さん。いつもより飲水量が多く、食欲が落ちているとの主訴で来院されました。
血液検査でカルシウム値の上昇(高カルシウム血症)と、超音波検査で上皮小体の1つの腫大を(2.4mm)が確認されました。同時にその他、高カルシウム血症の原因となる病気を触診・レントゲン検査・超音波検査などで除外しました。
ーエコー画像ー
↑典型例程大きくはありませんが(2.4mm)、その他の3つ(0.4-0.9mm)に比べて明らかに大きくなっていました。
以上の検査結果から原発性上皮小体機能亢進症として内科療法から治療を始めました。
しかし治療への反応が思ったほど得られなかったため、飼い主さまと相談し外科手術で大きくなった上皮小体を摘出することになりました。
ー術中写真ー
ー摘出上皮小体写真ー
その後カルシウムの値は着々と下がり、食欲は回復。飲水量も低下しました。
しかし今度はカルシウム値が低下気味になってしまったので、カルシウム製剤で補う事に。
残った3つの上皮小体が頑張って上皮小体ホルモンを分泌してくれるまで内服管理です。
今回手術したわんちゃんは、元々多飲多尿になる副腎皮質機能亢進症を持病に持っていました。もし飼い主さまがその些細な変化に気付かれていなければ、発見が遅くなり更なる疾患に繋がっていたかもしれません。
少しでも「あれっ」と思ったらご相談ください。飼い主さまの違和感が診断・治療に繋がります。
○ARIETTA 750 -DeepInsight-
↑今回診断に一役買ってくれた3月に新しく導入した超音波検査機器。
獣医師 下岡伸太朗