そうよ、ご・迷惑だわ
ドアが開く。
彼女はさらりとドアからでていく。
、、、、!
、、、ここしかチャンスはない!
俺の足、動け!
、、、、、
このタイミングだ!
ここなんだっ!
、、、、、、
僕は駆け出していた。
、、、、
、、、、、
ドアノブの横に引くと書いてある
、ドアを引き
彼女を呼び止める
、、、、、さん!
驚いた表情で振り返る彼女。
おれ、、
実は、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、
彼女が連れてきたワンコは残暑の頃だった。
おっとりした子で、とってもいい子。
なんだか調子が悪く、時々吐くとのことだった。
診断はリンパ腫。
それも消化器、T細胞型でなかなか予後が厳しいタイプだ。
助けたい、、、、、
なんとか、ご家族との大切な時間を伸ばしてあげたい。
飼い主さんは悪性の腫瘍と聞いて、
抗がん剤などは副作用が嫌だから、やらないでほしいとのことだった。
一生懸命、自分の持てる経験と知識とでの、インフォームドコンセントだった。
そもそもインフォームドコンセントとは、説明と同意の意味なので、飼い主様の同意がとても大切だ。
話すだけじゃ、だめ。
理解していただき、同意をいただいた治療をしなければならない。
ご家族との相談もしていただき、
抗がん剤の治療を副作用が起きるか起きないかのギリギリまで用量と効果を高めて、
このワンちゃんの生活の質をできるだけ高く保つ。
これは抗がん治療では当然のことなんだけど、これが難しい。
色々調べて、無い知恵を絞って、飼い主様家族の納得の治療ができた。
息子さん達や、お孫さん達の協力もあり、
院長や看護師さんの助けもあり、
ご家族と私達で目標にしていた春を迎えることができた。
腫瘍を目にみえなくなるレベル(寛解といいます)にはもって行けなかったけど、
副作用がほとんどなく治療をすることができた。本当に皆様に感謝です。
最後は、もうかなり厳しくなってきており、ギリギリまで元気にしてくれていたのですが
眠るように亡くなったとのことでした。
もっともっといい治療ができたんではないか、と自問自答するのですが、
飼い主様ご家族の満足と、何より本人が、亡くなる直前までいい状態を過ごしてもらったのは
悪性腫瘍との戦いではとても大切なのです。
、、、、、、、、
今日は同居の子を連れてきてくださっており、
調子も悪くないので、
次お会いするのは年明けかしらね
とのお話が、、、、
言わなければ。
と僕のココロにそのことが浮かんだ。
待合に他の患者様もいらしたので、
飼い主様がドアから出るタイミングで呼び止めて言わなければならない、、、、!
と思った。
寒い中呼び止めてしまった。
実は、今年いっぱいで、、、、
あら。
そうなの。
残念だわ、、、、
驚きつつも、私の気持ちも考慮してくれている様子。
ご迷惑をおかけしてしまうんですが、、、
そうよ、ご・迷惑だわ(笑)
申し訳ありません、、、、
でも、頑張ってね!
先生なら大丈夫よ!
、、、、、、、
ああ、、、、
自分なんぞに
そんなふうに言ってもらえるなんて、
本当に素晴らしい方だ、、、
、、、、、
みんなにわがままを言って
開院するのだ、、、、
本当に、皆様に感謝せねば。
そして、やるからには
本当に素晴らしい病院にせねば
皆様の期待を裏切ってはいけない。
そう、固く思った出来事でした。
、、、、さん、、、、